大気圏
生まれた日に本当の空があったことは幸せだ
僕は総ての底から
そして君は此処から
あの瞬間おなじ景色を見ていたのか
空気は尽き
色だけがまた始まる
真昼の月
屋根の上に残る陽
消えた線がまた交わる
その光の高架下では
もう僕ら
煤けた顔と汚れた手のひらを隠さなくて良かった
弱い風に瞬きするだけで
無理に遠い目つきをしなくても見えた
本当に空があって良かったと思う
覆い被さるものが無限の錯覚であって良かったと思う
2004/10/28(Thu) 15:39:44

雨の歌
君は聴くだろう
聴こえない音 未明の雨の中に煌く光
そのなかで暮らし苦しみ息をする
君は聴くだろう
手をたたいて響く湿った渇いた音
誰の耳も捕らえたりしないまま
誰の胸も打たないまま
日々に木霊しひび割れ空だけを穿つ
たったいま夢に見たのは
未来にまで共鳴する笛の音
その音色は真っ白く いつか小学校へやって来たあの映画の遠い汽笛のように君を撃ち貫いてしまうんだ
それは望むと望まないと 君を導く糸
君を消尽へ 灰と化すまで連れて行ってしまう導火線
手を貸せ 僕はメロディに変わるまで手探りで行く
遠からず斃れる2千万の雨粒の中で燻りつづけた焦りを
だんだんと目覚める街に焚きつける音 ほら
君は聴くだろう
2004/10/20(Wed) 05:06:51

秋の日
みじかすぎる日曜がどんなに晴れわたっても
バルコニーの向こう側まで踏み出したりしないでね
今はここで汚れた靴を脱ぐ
今はここで2秒 明日を待つ
仰向けに落ちていくのは綻びた午後の空
ほら 目を閉じて見る
初めて寒いと感じたあの日のこと
君がまだどこへも行くなと 金色の夢のような毛布を持って
僕の名前を呼んでいたその声はまだ続いているのだろう
2004/10/18(Mon) 00:25:22

著者近影
このちいさなちいさな朝の中で
醒めない眠り 褪めない空色の真下で
煤まみれの顔を
泥だらけの靴を
砂の城のその址に咲いた寂しい寂しいガーベラを
気づかないほど遠くから眺めているのは誰なのか
支えもなく
誇りもなく
ただ始まりの言葉が木魂のように風に舞うときに
雲の上から ぢっと見ているのは誰なのか

僕らはその誰かのために
いまこうして賢者の本も焼いてしまった
もう探さないだろう 日時計の影も
永遠に近づくように思えた10月 こんなにも涼しい光の道も
やがてはこの正しく狂った街が合法的に奪い取ってゆく

僕らは書かなかった
退屈を埋める一冊の古い絵本以上のものは けして描かなかった
抗えないことばかりと知りながら世界に呼びかけ続け
届き損ねた3000枚のメッセージ達を火にくべている愚かなプロメテウスの子供たち
そのくしゃくしゃになった笑顔を悲しいと思うのは誰なのか 今朝は分かるような気がするのさ
2004/10/15(Fri) 02:40:18

Not Be Killed In The DIAMONDCITY
今日スーパーマーケットで買った一瓶のジャム
一缶のソイ・ミルク
一番の抑止力-よく生きるため白く汚れた夜から逃げ帰る
近づきつつある或る日々から目を逸らし 目を凝らし
その確信へ核心へ隠し立てもせず突っ込んでいく
もう怖れは怖れのままでよいだろう
調理済みのサラダに身をやつしてみたところで 笑いの断片ぎざぎざしたマカロニの穴の向こうの世界は変わらないのだから
いまやソーダ水の泡でさえ人は撃ち殺せるし
一杯のヨーグルトで輪廻する生を救うことも出来る
オリーブ
月桂樹
呪われた無花果と悪魔の子供たちが爆ぜる石榴の実
金曜日には魚を食べよう-
ピノキオのような嘘をついて弊店間際の投売りに群がる僕ら
口にする俗っぽい祈りの言葉は冷え切ったフライのように
やせっぽっちの壊れた鯨の胃の底に引っかかっていた
戦う用意はけっして整わない
まるで僕らは駄目なギンズバーグ
架空の憲兵に後をつけられて最前線を踊る気分さ
さあ今夜はもうお開き スーパーマーケットの劣化売らん哉の弾丸の雨をかいくぐって白く汚れた街を出て行こう
2004/09/26(Sun) 10:03:23

音楽の続く間は僕ら 輪になって踊れるね
砂利を敷き詰めた広場で
善と悪の向こう岸で
誰かが石を積む河川敷で
ほんの三分続く 永遠の夢のよう
祈るだけでは届かないとしても
歌うだけでは聞こえないとしても
たとえ世界の欺瞞を告発する写真展の前で日常の空がどれほど僕らの下世話な笑いに汚されていても
それならそれでいい
神様からは罪せられ悪魔からは憐れまれ そうやって僕らはこの馬鹿げた人間喜劇にたどりついたんだから
君は火を盗み 僕は君を知らないと言った
いまはここで高らかにドローゲームのファンファーレが鳴る
どんなに精巧なクラスター爆弾でも僕らの闇に食い込むことは出来ない、その望みなき望みの中であと少し踊る
2004/09/14(Tue) 12:30:39

非情事態に備えて立てつけの悪いブルースを歌うなら
揺れたければ揺れるがいいさ
崩れたければ崩れるがいいさ
世界は
騙されても笑われても玉葱のようにその下から正体不明の正体をさらし続け続け
そこには美しく醜く輝く日々があり
互いが互い吹き飛ばし合う理想な悲壮な社会があり
ついに一番腐ってんのは自分だって解ったんなら
そのまま滅びてしまえ
アトラスが玩ぶロシアンルーレットをこめかみにくっつけて
がたがたしてたのは僕らか大地か僕らの電車か
2004/09/07(Tue) 09:34:56

魚より
ゆうべは青い月のかわりに
雨粒が道路に電波を刻みながら
けして見えないものでさえ
見えると言うしかない君を祝福した

人は魚で
嘘は泡で
幸せは―それは水ではない
太陽の暦の外で呼吸を繰り返す奈落の園
僕はそこから来た

魂を追い出したあの男の話みたいにいつだって結末は滑稽な破滅さ
富よりも権力よりも燃えるような恋よりも
好奇心に殺される寂しき熱帯魚たちに捧ぐ
さあ今日は善く晴れただろ それは世界の正しさ
我侭な束の間の天と地が眼差しの中で十日の菖蒲よりも痛ましい君の健気さを笑う
あとは今夜 月を見て青白い生ぬるい水底から空を仰ぐだけ
それが何色だったか教えてあげる
嵐の晩も秋風至る朝も僕らは同じようにしか泳げない
せめて準備体操だけはしておきなよ
2004/08/31(Tue) 12:43:16

sang
たとえばほんのあとすこし祈りが遠く響いたら
眠れぬ夜の果てにさえ独りで立っていられる
いま君は汚れた顔を拭うすべもなく
裏通りを手探りで迷いながら
その張りつめた糸の切れる時を数え続けてる
ねえ
やがて来る朝が約束の朝だとしたら一体、何を許せるだろうか
僕の血は
腐った智慧の赤い実を搾ったような微笑みに似ている
いくら僕を知らないといっても絶対に忘れたりはしない
2004/08/19(Thu) 04:18:18

無信仰者の今日
なにも 書かない
なにも 云わない
ただ 祈る
幸福を ではなく
冥福を でもなく
あらゆる願いの先にある祈りを祈る
それだけは最後の神様に賭けたっていい
2004/08/15(Sun) 10:18:11

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