今日の秤
今日を誰よりも愛した人が街中にいた日
何百人を目の前にしても
その十分の一だったとしても
問われたのは一人ひとりの胸のうち
ほら
君はこの夕暮れにも溶けきらない混沌を抱え
それでもyesと歌わなくちゃならないと知った
質でも量でも技術でも才能でもない
ただその声の響きだけ
それだけがこの胸に問われた今日の秤
2004/06/06(Sun) 01:21:43

モリゾ
彼女はきっと知っていたに違いない
生きているその呼吸のその時間のその流れのなかで輝いていたのだということ そうでなくては
教養と勉強と訓練をどんなに積み重ねても あんな"速さ"のなかで その光の層をすくいとることなんて出来やしなかったろう
すべてのうつくしい人間のなかでも子供たちにしか与えられていない 電車が通り過ぎて行く直前の眩しい風のグラデーションのような 何か
彼女はうつくしく老いながら いつも耳をすませていたに違いない だからこんなにも
時系列で並んだ静かな薄暗い部屋のなかでさえも 彼女が出会い学び教えた人やものの断片が ちいさくちいさく 誰かの胸に灯るのだ

音楽もかくあれかし と思うのだが
2004/05/22(Sat) 03:43:03

さよなら、ノア
愛されるには時に弱すぎた、
引き裂ける昨日と今日の姿、
箱舟に乗らない総ての僕等、
そのままならぬ想いたちがが雨を降らせてる

さて そろそろ洗い流してしまえばいいのだ、
傷も、誇りも、街中の安っぽい看板も、
さながら流しさってしまえばいいのだ、
僕は何も持ち帰らない、領収書ぐらい
勝利の月桂樹、平和のオリ−ヴ、そんなのは鳩に聞いてくれ

まるで水槽の中の魚まるで泳がない魚、雨は降り続けても僕は出かける壊れた傘を不恰好にさして電話代を払いに行くのさほらね明日世界が終わるまえに言わなくちゃならないから愛されるには少し弱すぎたからね
2004/05/16(Sun) 10:38:06

都市の記憶
その朝が晴れていたか曇っていたか じつはあまり覚えていない
ただありきたりの喫茶店 日曜日の空っぽのテラス その明るさだけは強く強く目の中に残って
ーちいさな空だったから?
それとも寝不足のしょぼついた瞼のせいかー
ともあれ僕は君の街をいまだによく知らないまま
あれほど君は僕の街を知ってるというのにね
こんにちは も さよなら も 絶対的に足りなかったんだ認めあうためにはエゴイスト過ぎるのか
アーティストすぎるのか
いまとなっては 僕ら すべてを傷つけることができる
すべてを傷つけることができる
よく知ってる
空は見なくても光は感じられる
眠らなくっても夢は 十ニ音階の愛は
すべての雲と青天井とに明いた傷口は−

覚えていない?

コーヒーをこぼした上着を羽織り
色彩がまだ目に染みないうちに出かけよう
また戻ってくるさ 何度でも何度でも
すべてを・・・ために
2004/05/11(Tue) 12:47:03

thank you singers
躓く時は美しく躓けばいいのだろうね
転んだ時も
苦しんで起き上がればいいんだね
その歪んだ顔さえも美しい詩のように
擂りガラスに映せばいいんだね

スカイのように、
ヘヴンのように。

両手をいっぱいに汚しながら 汚れた街の隙間で歌うなら
それこそが総ての泉の源なのだろうか
メロディのように爪弾く時間がこつこつと豊かに響くその弦は
まるで錆びついたスプリング
もうなにも撥ね飛ばしたりはしないのだろうか
今夜ふと迷いこんだ裏通り ここがどこか知らないまま
どこかに彼等はいまもいる いまもいて
遠い昔と同じようにいまもひっそりと歌っているのだろうか

スカイのように。
ヘヴンのように。

ねえ 上ばかり見て歩いてた 僕の躓き方を見たかい
2004/05/03(Mon) 01:58:22

雨の朝
今朝を一番上手に迎える人には
まだ良い物を信じられる人には
拍手をあげよう
小賢しい世界を小刻みに震えながら通り過ぎて行く路面電車の表情は老婆か子供か
とにかく優しく見えたのだった
少なくともその雨と、踏切に並ぶ傘のモニュメントの中に立って僕は何かを感じたはずだった
昨日のまでの残滓か?斬新なまでの今日の機能か?
うまく言い表せないままに遮断機はもう行けと言う
善も悪も選択の余地はなく
地上80センチくらいのセンターライン上空、撥ねられそうに揺らいでいる
それでもーとりあえず、と僕は決めてみたのだがー
一番上手に今朝を迎えた人に
まだ、いつも、良い物を信じられる人に
その人たちにこそ、この散り別れるモニュメントは贈られる
見てごらん、あの頃、なぜ僕達はあんなにも傘をさすのが嬉しかったんだろうね?
2004/04/27(Tue) 16:16:51

自転車風力計
手を汚す薄紅の空
その出会いから 一歩だけ先に行くのさ
僕らの背には
袖口には
光と翳りを一身に纏う風の精が停まっている
2004/04/23(Fri) 05:00:31

未来兵士
ふるいふるい戦場の跡で笑い 泣き 傷つけあう
未来兵士には銃なんて要らないのさ
他愛なき死の隙間 観ないようにして
自由をあてにしているのさ

その青空の下で 朝早く駆け抜ける列車の中で
ただひたすら僕は眠った

狂い、普通の感情の上で悲しんでは傷付いてる
芝居形式の日々
書き割りを見せてごらん
洗いざらい白状してみても自分の言葉ではないようだ
白く刻まれた今日を生きていくこと
その中にある ほんとうの詩の瞬間それだけを
あてにしていたいのだ

未来兵士
カフカの連続再生のような夢を
観ながら僕は眠った

未来への意思
2004/04/18(Sun) 09:14:25

分かってはいたが
いったい何処に行けば会えるのか分かってはいたが
迷うことだけは
若くして書いた遺書が笑っていた引き出しの中
和解 哄い
マアヨイカナダキョウチョウショウソレコソガニンジョウ
ソレコソガジンセイ

分かって、吐いた。明け方には神様ハイナカッタ
2004/04/14(Wed) 09:02:43

誰かが見上げた月に
そして誰かが見上げた月が嘘つきたちを照らした時
明日の闇を映して河は流れる
崩れかけた工場跡と傷だらけの金網に絡みついた影の叫びと風に散る馬酔木の花
飛び石ひとつふたつそして立ち止まった野良犬が水面の月と自分の姿を空に探しはじめる
崩れかけた工場跡は草原
目もくれずに駆け抜けても駆け抜けても辿り着くのはいつも同じ景色
森を抜けて河は流れ 世界の果てに月が咲いている
エデンの外 河は流れ月が咲き
そして誰か見上げている
星の見かたも量りかたもやがて忘れて構わなかった
明日を待って静かに息をしている
屑のように燃え残ったあの太陽の子供たちはもう目覚めたかな
笑い声と風に舞う光の砂
当たり前の日々が流れ 当たり前の月が照らしてる
エデンの外 時は流れ人は歩き
そして月を見上げている
2004/04/09(Fri) 04:43:44

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