突然ですが、
諸事情により、このホームページの更新を当分の間、停止します。

べつにそんなに大げさなことじゃないけれど。
閉鎖ではありません。
住む人が昨日まで居た建物のように、ここは残り続ける。
そのうちリニューアルできたらな、と思ってる。

ゆーきゃんの活動は当面、下記blogでお知らせしていきます。

http://blogs.dion.ne.jp/youcan/

(これまでの詩日記も引き続き読めるようにしています。よかったら、お気に入りの変更を。)
これからも、どうかよろしくおねがいします。
2005/02/08(Tue) 07:34:56

週末の虹
人間の作った 既製服のような幸福
今宵あの紅い 眩いばかりの観覧車に登り
白い月の一段下から見下ろす街には
黄色い人の黒い目が踊り
玉虫色の約束と誓いが出会いそして遠ざかり
真実 嘘 すべてが出歩いているように見えるだろう
週末の虹を渡って行くその先をまだ僕は知らないけれど
2005/01/29(Sat) 03:54:34

今夜
この寒く枯れた夜空に向けて
本当に言うべきことを誰も彼も見失いつつあるその真冬の最中に向けて
自転車には自転車の豊かさ
電信柱には電信柱の暖かさ
そういうものを信じながら生み出す意味を
解き放ちたいと思う
2005/01/17(Mon) 02:42:37

unconditional
どんな旗も誇らしいとは思わない
星条旗も日章旗
砦や海にたなびくすべての勝利
ましてやジェネレ-ションの打ち立てる叫び
そういうものを今日は求めない

煤と誇りと油にまみれた顔も
食べても食べても吐いてしまう理想も
霙のような白旗
東雲のような白旗
廃材を焼く煙のような白旗
誰かの憐れみも蔑みも救いさえも総てその下に
僕らは馬鹿みたいに笑っている

これで終わり?
そして無限に続くループ上のダイジェストシーン達
本編を生きることは許されないエキストラのような工作員
僕は日々の果てまで行くその術だけを知りたかった
一秒一秒を消化する強力な胃袋は持たない
一場面一場面で主役を演じる器もない
ただ日々の果てまで行くその術だけを知りたかったんだ

そう もっと綻びろ もっと汚れろ 白旗よ
2005/01/06(Thu) 11:42:40

案山子
降ったり止んだり 今日をやり過ごす術を忘れた案山子になった気分だろう
街に出れば
正月気分を無理やりに奪われた背中
まだそのなかでぬくぬくと笑う
うそ寒い空気が肩口から背中に手を伸ばし
僕らは吐き気と
虚無感と
言いようのない希望とをポケットに突っ込んで歩いている
一月の迷路は妥協の多い日々にも似て
投げ出された工事現場
色とりどりの路上駐車
黄色い碁盤の目のどこかで 君は簡単に迷ってしまったんだ

ねえ どうか感受性だけは
この陽光のようにまっすぐでありますように
屈折や遮断や代替灯が街をどんなに覆っても
見上げる空が透明なまなざしを降り注ぎますように
生れ落ちたそのときから人を支え続ける大地は
僕らを板ばさみにしたりなんてしない

ラインの上を落っこちるまで行き
ぬかるみの中を踊るように駆けた
ねえ どうか今日のこの一コマが
金色の畑にオーバーラップする
有り得ない場面転換を想ってもいいかい
2005/01/04(Tue) 22:49:38

朝凪の裏通りで待っているから
沙漠の井戸のような優しさを汲みに行きたくなったら
いつでも呼びにおいで

西と東を隔てる壁の名残も
赤い星を称える勇ましい軍歌も軍靴の響きも
ましてや陰で糸を引く黒幕たちのつまらない栄華も
この汚れた顔を映す水鏡の空の彼方に消え
もうけして僕は聞かないだろう
狂楽、享楽、京洛の街
その片隅で聖者が説いた言葉なき福音
今はそれだけを信じているんだろう
かたちと色、そしてメロディは多分すべてに宿り
立ち上り、燃え上がり、そして崩れ―
金色に光る朝の砂に帰ってゆくのだろう

ほら、朽ちかけた木製のベンチに腰掛け
ひとつの終わりに安らう帆をただ眺めていると
不意に世界を染めるひとつの意思に出会う
朝凪は語るべき言葉を待ち
目覚めた君がひと口の優しさを飲みに行こうと呼びに来るのを待っているのさ
さっき灰色の虎縞の猫が笑いかけた
もうすこしという気がずっとしている僕をどうか信じてよ
2005/01/04(Tue) 02:36:41

簡単な計測器のうた
もっと走らなければならない
速く、ではなくて
疾く

ランボーの詩にも似た
時間で測れないスピードを

枯葉絶え間なく落ち
慌しげな師走の道路工事
それらの喧騒を悠々と照らし続ける月

歩くそのリズムで
簡単にここ そこを断ち切って舞い上がる

僕に附いて来るかい?
もっと疾く これから出かけようというところさ
2004/12/16(Thu) 05:20:10

ニック・ドレイク
手を振った
七段目に腰掛けて見えない誰かと話す子供たち
ピンク色の月を欲しがり
善く歩ける靴を欲しがり
どんな北風にも凍えない愛を欲しがり
でたらめなメロディで四拍子
口笛を吹いていた
十一月の坂道 ただ錆び付いた自転車
背番号もない使徒がそいつに乗って
黙ったまま指し示す幻は道端に舞う
冴えないベージュのトレンチコート
今日をかきむしるようにドアをノックする
いまは荒れた唇 口にするのは希望より少し冷めたコーンスープ それで太陽の光を思い出している
いつからか笑いの対価も競売にかかるようになり
いつからか街をまっすぐに抜ける道には盗賊たちが目をひからせて
ひたすらに夜だけが更けて行くようになってしまった
子供たちは白内障のウサギのような瞳で月を夢を見上げているけれど もう目の中と空とどちらが赤いのか判らなくなっているみたい
七段目の天使は いつまでそこに留まってくれるのだろう
あと十六小節この歩く速さで心臓が鳴るあいだ
せめて僕等のために歌っておくれ
ほら 投げやりな指揮者のようにまた手を振った
2004/11/30(Tue) 05:23:02

はやくここから
はやくここから逃げよう
はやくここから逃げよう
はやくここから出て行こう
はやくここから出て行こう
はやくここから生まれ
はやくここから育ち
はやくここから死に 朽ち果て 灰になってしまえばいい
僕らはもう知っているはず
永遠を賭けてその時を待つ
途切れることのない環になった暗いメロディの中
手探りで手灯りで突破口を探す
使い古された知恵と 誰にでもすぐ思いつく方法と
完全に便利な諦めの科白 そして差し伸べられる簡単な救い
聴こえるかい この羊水のような日々に沈んでいた天国と地獄にたゆたい 漂うまま 名付けられない羊たちの笑い声
僕らは毎日 紙を食べ 藁を掴んで生き延びるよ
ほら はやくここから煮えたぎる命を奪い
はやくここから滲み出す血を搾ってよ
痕がつくほど穴が開くほど強く強く握っても
何もかもが無限に滑り落ちてしまう
まるで残ったのは取りこぼした青い空だけ
ただそれだけのために何万冊もの本が書かれ
何千本もの映画が撮られたのだった
そんなことはとっくの昔に知り尽くしたはずだよね 僕ら
それでもまだここにいる 僕ら
朝には夕暮れを待ち 宵には夜明けを待つことをやめず
はやくここからと焦ることに倦まない僕ら
そんな僕らはこの晩秋の寒さの中でまた呟く
たとえば来年
たとえば春
たとえば今 この瞬間に
はやくここから何かが始まる筈だ-
はやくここから
はやくここから

あとはこの詩を可愛らしくする 少し永めのユーモアだけが必要みたい
2004/11/09(Tue) 01:37:35

気分
始発がやっと着いた地下鉄のホーム
あの人がふと後ろを振り向く
誰もいないことは知っているくせに
まるで呼び止められた気分を求めている

このコンクリートで包まれた横孔のうえに
コンクリートで彩られた街
そこに広がる朝の空がどんなに蒼いか確かめるまでもない
気分を求めてるだけさ

彼女にはたぶん還るところなんて在りはしないんだ
そう思ったらなにかが分かりかけた
誰かと自分と そして見ず知らずの神様の部屋の鍵
みんなじゃらじゃら云わせながらどんなに疾く駆け上がっても
出口に待っているのは透き通った無口な風
澄み切れた10月最後雨上がりの朝

一晩じゅう隣の街で遊び疲れて
ぼんやりした頭の片隅で彼女は聞くだろう
呼び止められた気分を求める自分の掠れた声
おいで ここまで ここから そして行っちまえ
叩くがいい されば開かれん‐ほらこれ 読んだことない?
別れ道の決まり文句さ
無限の塵 広がる空 世界 世界 正解はこの赤い光のように始まりと終わりにしか目に映らないのかもしれないな
さてそろそろ僕も 最果ての路上に咲くアザレアを夢見ながら 散らかし放題のちいさな寝場所に戻る気分
2004/11/01(Mon) 12:54:32

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