鍵盤ゆういち日記

鍵盤ゆういち日記
2006.1~9月

    • ヒトリブン

    • [ 2006/09/22(Fri)12:35:38 ]



    • 長袖ジャージを羽織ってきたのは軽く失敗だった。

      男にしてはだいぶ長い襟足がうっとおしいほどかかる首筋に
      じっとり汗を感じるぐらいの秋の陽気の中、
      明大前で井の頭線が来るのを待っていた。

      それにしてもこの電車はいつも混む。
      自分が、並んでいる列の12番目ぐらいである事を考えると
      今回もその混雑からは免れそうにない。
      長袖ジャージの失敗がまた、加速度を増す。



      電車に乗るとやはり、混んでいた。

      運良く、冷房がさらりとあたる場所だったため
      暑苦しさからはだいぶ逃れられたが
      まあどこかしら周りの人とは体が触れている感じ。
      動けるスペースなんてほとんどない。
      前の人の登山級のリュックが少し息苦しかったが
      普段、鍵盤を持ち歩いている俺の迷惑度なんてこんなもんじゃない。
      むしろこの状況で文庫本を広げる隣のおにーさんに、
      ちょっと東京を感じていた。

      ふと、一番端の席に座る女性と目が合った。
      キレイな人なのは一瞬でわかった。



      各駅停車なので次の駅で止まる。
      誰か降りねーかなとは思ってたが、そんな都合のいい事など起こるはずもなく
      やはりむしろ乗ってきた。
      2,3人ではあったが、車内密度は当然また上がる。
      その中の一人におじいちゃんがいた。
      いや、正確にはおじいちゃんではないのかもしれないが、
      外見的には65歳はゆうに越えてるであろう男の人だった。

      一番端、つまり乗降扉に一番近い場所に座っていたその女性は
      いち早くそのおじいちゃんに気付き、
      「どうぞ」という声とともに席を立った。


      自分も何回か席を譲ったことがあるのでわかるが、
      こういうのは「どうぞ」という声をかけるだけでは成立しない。
      たいていの人が遠慮するからだ。
      本当に譲る意思があるなら、まず席を立つ。
      そういう意味でこの女性の行動は正しいと思った。





      ただ、そのおじいちゃんは断った。



      本来ならそのおじいちゃんのいたスペースに移動しようと思ってたその女性は
      実に行き場がなく、だいぶ窮屈な状態でつり革を握ることになってしまった。
      プシューという扉が閉まる音とともに
      その半径1mが妙にきょとんとした空気の中、電車は走り出した。

      席は1つ、空いたまま。





      どっちも悪くない。
      その女性も、おじいちゃんも。

      お年寄りが来たので席を譲ろうとして、
      最初は断られたけど、またいつか座るかもしれないと立ち続けたその女性はもちろん、
      せっかくの好意とはいえ、それを受け入れなかったおじいちゃんだって、
      悪くはない。

      もしかしたら足腰を鍛えているのかもしれないし、
      まあそうじゃないとしても席に座るか座らないかなんてのは
      その人の自由。
      「せっかく譲ってもらったんだから意地張らないで座ればいいのにねえ」
      なんてのはかなり上からものを見た意見だと俺は思う。
      「お年寄り」=「みんな座りたい」とは限らない。
      まあ実際ほとんどがそうかもしれないが、中にはきっと違う人もいる。
      その理由が例え「意地」だったとしても
      それをどうこう言う権利なんて、ない。



      結局、プラス一人分の混雑を招いただけになってしまった
      その女性のなんともいえない表情が、印象的だった。

      いかんともしがたい一人分の空席を乗せながら
      電車は渋谷駅へと向かう。





      確かにあのおじいちゃんが座れば、
      あの女性にとっても、そのまわりの人にとっても、俺にとっても
      きっとベストエンディングだった事には変わりはない。
      ただその、みんなが望むベストエンディングを
      本人も望んでいるとは限らないんだ。
      難しいもんだなあ。



      渋谷駅に着く。

      今度自分が譲る時がきたらどうしよう、
      いや、いつか自分が譲られる時がきたらどうしようか、なんて考えてはみたが、
      明日の事もわからないのに
      40年後の事なんてわかるわけねーか、と早々にあきらめて
      足早に改札へ向かった。

      人でごった返すこの駅に、空想する時間なんてない。






      「まもなく発車です」

      対面の満員電車が、またホームを出て行く。



      今日のBGM:「ピアノ・ソナタ 第14番 月光」 by ベートーヴェン



    • かしこ

    • 赤+青=白

    • [ 2006/08/26(Sat)02:21:19 ]


    • やっぱり、この色が好きなんだよなあ。

      トリコロールとか言うんかな。
      フランスの国旗みたいな感じ、床屋のグルグルな感じ、
      赤と青と白。
      サンサンで一番最初に作ったCD
      「SET」の色。


      日記はやっぱり、ここがいいや。





      今、朝まで生テレビが咆えている。
      たぶん朝まで咆えている。

      俺はこの番組が好きだ。
      話してる内容はようわからんが、好きだ。
      なんとなくこんな話なんかなと予想しながら聞く。
      説明書を細かく見るのがもどかしくて
      どうなるかわからんけどとりあえずやってみる
      あの頃のファミコンに、ちょっと似てる。

      「いいゲームは説明書を見なくてもやり方がわかる」

      そう言えば誰かが言ってたっけな。





      アタマの悪い奴ほど、難しい言葉を使う。
      アタマのいい奴ほど、POPな言葉を使う。



      人のセンスは、言葉に出る。



      今日のBGM:「リリー」 by ANATAKIKOU



    • かしこ

    • Now form a Band!!

    • [ 2006/07/30(Sun)20:01:02 ]



    • 河崎が泣いているのは、わかっていた。

      矢野もたぶんヤバイだろうと思ってた。
      ノムはまあ大丈夫だろう。
      比較的唄わないところの多い「ヒューリ」で
      演奏中、メンバーの方を見れなかったのは初めてだ。


      サンサン史上最低のヒューリは
      サンサン史上最高に気持ちよかったんだ。





      メールは、便利だ。
      伝えたいことがあれば
      クリック1つであっという間に相手に届く。
      BBSもそう。
      「書き込む」を押せば、一瞬だ。

      誰が書いても同じ字の大きさで、同じフォントで。


      真夏にもらった卒業アルバムには
      メールじゃないメッセージがたくさん、
      ほんとにたくさん書いてあった。
      俺の心のリミッターをはずすには充分過ぎた。
      打ち上げで「早く開けて読んでみろ」と言われたが
      そんなもん読めるわけがない。

      翌日、泥のように眠ったあと、
      一人でこっそり読んで、こっそり泣いた。

      何かと凝った言い回しが好きな自分の心の中で
      死ぬほどベタな5文字しか思いつかない。

      「ありがとね」





      ライブは最高だった。

      何も考えずに唄い、何も考えずに弾き、何も考えずにしゃべる。
      そんなライブが最高に気持ちいいってこと、初めて知った。
      最初で最後の卒業式は今までのどのステージよりも
      最高の晴れ舞台だった。

      「なんか霧がかかっとる」

      矢野はずっと言ってた。
      でもそれは、あいつの瞳の上の
      0.1ミリの透明な液体のせいだったってことに
      あいつが気付いてないだけだと思う。


      ライブは最高だった。





      雪も降らない、サクラの気配もまったくない、
      SUNSUNと太陽の匂いばかりする卒業式当日は
      俺には忘れられない日になった。

      5年後でも10年後でもいいや、またこの4人で式典を開こう。
      その時は、7月28日下北沢CLUB Queに集まった奴、全員出席だぜ。
      だって卒業したあとにすぐみんな楽しみにするのは
      「同窓会」だろ??





      最後に、お世話になった校長、CLUB Que店長
      二位さんの卒アルの言葉がなんだか素敵だったので
      残しておこうと思う。




      「ただ終わっていくのなら、ゴミっす」


    • かしこ

    • 何も言わずに付き合ってくれてサンキュ

    • [ 2006/07/03(Mon)23:36:13 ]


    • ちっちゃい頃、とても負けず嫌いだった僕は
      よく「悔し涙」を流しました。

      ある日「コーラスの夕べ」と書かれた箱を押入れで見つけた時のこと。
      夕べの「夕」をカタカナの「タ」だと思った僕は
      近くにいたおかんに「たべ見つけたー」と言ってその箱を持っていきました。
      もちろんおかんは答えます。

      「あー、これねー”ゆうべ”って言うんだよー」って。

      泣きました。
      泣きじゃくりました。「たべだー、たべだー」って。
      「そうだねー、ごめんね、たべだったねー」ってすぐおかんに言われても
      心のどっかでは自分の負けを理解してたんでしょう、
      涙がどんどん溢れてきました。今でもはっきり覚えてます。
      親父に将棋で負けて、「もう1回」と泣きながら駒を並べ直したり、
      野球の試合でエラーをした日には、嗚咽で苦しくなるまで泣いてましたね。


      でも年を重ねていくにつれ、当たり前のようにそんなことはなくなっていきました。
      20歳を超えてからはもう数えるぐらいしか覚えてない。
      悔しさはきっと同じはずなのに、いつしかそれを制御できるようになったんですかね。

      「今のはそんなに本気じゃなかった」事にするとか
      「これで自分のすべてが終わるわけじゃないじゃん」とか思うことによって
      その悔しさや苦しみからはちょっと解放される。
      そんな少しずるい技を使ってたような気がします。




      日本代表は負けました。
      結果だけ見れば、惨敗でした。
      でも試合後の選手達の多くは結構冷静だったようにも見えました。
      サバサバしてると言うか、言葉を変えれば「スタイリッシュ」と言うか。
      少なくとも画面からはそんな感じが伝わってきた。
      ほとんどが自分より年下の選手達、
      「今時の男はそんなもんなんかなあ」なんてちょっと思いました。


      ただ、誰よりも「クール」で「スタイリッシュ」だったはずの中田英寿は
      ピッチに倒れ、しばらく動きませんでした。
      空を見つめて泣いていました。


      なぜか「コーラスの夕べ」を思い出しました。





      ずっと想ってた人に自分の想いが届かなかった時、
      とても大好きだった人に別れを告げられた時、

      「そんなに本気じゃなかったじゃん」
      「すべてが終わるわけじゃないじゃん」



      そう言い聞かせる度に
      涙がとめどなく溢れてくるのは、なぜだろう。



      〜フリップサイド会報誌「SIDE VIEW TIMES」7月1日号より〜





      ヒデ、ありがとう。


    • かしこ

    • [ 2006/06/11(Sun)13:02:58 ]



    • 涙の数だけ強くなれるなら

      苦労はしないね、と言った君の

      目の中に光るこぼれおちそうな

      涙を 見て

      僕が強くなろうと 思う


    • かしこ

    • 10パラレル

    • [ 2006/05/21(Sun)03:27:13 ]



    • 光があるから影もあって。

      勝ちがあるから負けもあって。

      ブサイクがいなかったら美人もいなくて。

      不幸があるからこそきっと幸せもある。




      だから

      「あなたがいるから私がいる」 ってのは

      ほんとは意外と

      すごいことなんだ。




      たぶん俺が、思ってるより。


    • かしこ

    • タネと仕掛けは

    • [ 2006/04/28(Fri)15:13:04 ]



    • 「あなたは人にとてもやさしいが、バカだ。」

      「あなたはバカだが、とても人にやさしい。」


      日本語には、すごい力がある。
      表現する言葉の種類だけでもかなりの数があるのに、
      この例にいたっては順番を並べ替えただけ。
      それでも印象は、驚くほど違う。
      小学生レベルで習う文法でも、
      こんなちょっとマジックじみた芸当ができるんだ。

      すごい力がある。

      時には、恐ろしい凶器にもなる。
      時には、この上ない愛を伝える掛け橋にもなる。

      でも、組み合わせ次第で何色にもなるこの魔法が
      俺は好きだ。





      だいぶ前に、「夜のヒットスタジオ」という番組があった。
      ほんとにだいぶ前だな、中学校ぐらいかな。
      ユニコーンで登場して大迷惑で歌詞をとばしてる民生さんとか
      デビューしたてのB'zが出てて
      名前の読み方がわからないとか言われてるのを見た記憶がある。
      それぐらい昔の話。

      DREAMS COME TRUEという3人組が登場した。
      バンド名の由来とかを聞かれてるとこを見ると
      今にして思えば初登場だったのだろうか。
      ベースの彼がこう答えていた。

      「僕らは、夢は必ず叶うものだと思ってまして・・・」

      どうやらそこからそのまま付けたらしい。
      幼心に、なんてダサいバンド名だと思った。
      反抗期だったのだろうか、
      「夢は必ず叶う」というフレーズにも一瞬、嫌気がさした。
      でも結局そのまま見続けて、
      吉田美和さんの唄に圧倒されたのはその数分後。
      姉ちゃんが気に入って、しばらくドリカム漬けの生活になるのに
      そんな時間はかからなかった。
      名前はともかく、好きなバンドになった。





      俺は「事実」が好きだ。
      言葉にしても、表現にしても、考え方にしても。

      抽象的なものが嫌いなわけじゃない。
      でも抽象的なものは、逃げられる。
      ふり幅が広い分、相手にゆだねることができる。
      もちろんそこを楽しむこともあるのだが、
      俺の心にナイフのようにグサっと刺さる言葉や表現は、
      得てして「事実」だったりする。



      「Dreams come true」

      これは確かむこうのことわざだったか。
      正式な訳はどんなんだろう。
      「夢は必ず叶う」でいいんだろうか。
      確か、そう習った記憶もある。

      「夢は必ず叶う」

      全然好きな言葉じゃない。
      それは、嘘だからだ。
      理想ではあるかもしれないが、
      嘘だ。



      ただ、この言葉のとり方をちょっと変えると
      とたんに好きな言葉になる。
      日本語のマジックを、使う。


      「夢はあきらめなければ終わらない」


      こう。

      こうすると一気に好きな言葉になる。
      それは「事実」だからだ。

      どれだけ壮大な夢を見ても、
      そしてそれがほぼ実現不可能なものだとしても、
      例え、結局不可能なまま死んだとしても、
      本人があきらめなければ、それは終わらない。
      わかりやすくて、単純で、驚くほど事実。

      こんな言葉が、俺は好きなんだ。






      嫌いな数学の時間。
      2次関数。
      黒板にはわけのわからない曲線が並ぶ。
      まったく興味のない俺の目線は、完全に窓の外。
      ただ、おもむろに先生が口にしながら黒板に書き出した言葉に
      一瞬ビクっとする。



      「0ではないが、限りなく0に近い場所」



      そういう場所って、この世界にも
      意外にたくさん
      ある気がするんだよ。



      今日のBGM:「So-So」 by pinkopinko



    • かしこ

    • 31アイスクリーム

    • [ 2006/04/21(Fri)07:28:23 ]


    • そういえば今月、俺はもう1つ年をとる。
      つーかもう来週か。いやー、早いねー。

      まあ昔から俺は年をとるのが好きだ。
      というのもちっちゃい頃から1回も年より上に見られたことがなかったから。
      小、中学校時代は背が低く、
      平均身長日本一の新潟県の中にあってはそらもう小さい部類で。
      前から2番目の経験もあった。
      高校でようやく伸びて、晴れて大学生になっても
      4回生の最後の履修登録に行く道すがら
      3つぐらい下の後輩にサークルの勧誘を受ける始末。

      そういえばこんな事もあったな。
      高校2年の夏、1ヶ月ぐらいドイツにホームステイしてた時のこと。
      ステイ先のアレックス(高2)主催のパーティに行って
      「彼はアレックスとおない年なのよー」という紹介をうけた。
      欧米人には日本人は普通にしてても3,4歳若く映ると聞いてたので
      よし、ここはと思い
      「はは、中1の勉強はもうしてないけどね」
      なんていう
      シニカルでウィットに富んでリサ・スティックマイヤーな
      小粋な返しをしたつもりだったのだが、
      あまりにもリアルにそう見えたため、周りの仲間が一瞬サーっとひいてしまったのだ。
      しまいにゃ
      「い、いいえ、・・・全然そうは見えないわよー、おほほ。」
      なんてみんなに軽く慰めてもらう始末。
      そう。こんなありさまなんだ。


      そんな俺にとって、見た目はどうあれ
      実年齢が増えていくってのは単純に嬉しい。
      年齢じゃない、とは言いながらも
      年齢によって説得力が増すことも意外といっぱいあるからだ。
      言葉にしても、音にしても。
      単純に「重みが増す」とかそういうことじゃなくて、
      んー、こう、なんて言うかな、
      この年だから言えることというか、年齢に照らし合わせて考えてというか
      ま、ようわからんけど、なんかそんな感じ。
      ともかく自分が、俗に言う「おっさん」になっていくのが
      なんとも楽しみだったりするわけです。



      で、その記念というわけでもないんやけど、
      自分の個人サイトなんてものを作ってみたんです。
      ヘラクレス矢野ちんに対抗してね。
      ふはは。
      ・・・っていうかまあだいぶ前から実はあったんですけど。
      けっこうノリというか、遊び感覚やってんけど
      シナトラヒカルがだいぶ本格的なフォーマットを作ってきやがったんで
      なんかちょっと気恥ずかしくなってしまって、公表はしてなかったんです。
      で、まあこの誕生日をきっかけにいろいろ広げてみようかなと。
      まだまだ何にもできてないですが
      けっこうなんでもアリなサイトなんで、気軽になんでも書き込んでみてください。

      http://www.k5.dion.ne.jp/~yuichi/

      いろいろ増やしていこうという気持ちは、あります(笑)。





      今週、天気のいい日に久しぶりに野球の試合をした。
      秋に余裕で投げてた場所からスローイングしたら、
      ちょっとギリギリだった。

      ブランクがあったからだと自分に言い聞かせてはいるが、
      「実年齢が増えていく」という事の本当の怖さを知るのは、
      実はこれからなのかもしれない。





      いーーやーーだーーーーーーーーー。



      今日のBGM:「地球の裏側」 by 寺田ワンマイク・セッションズ



    • かしこ

    • 走れメロス

    • [ 2006/04/17(Mon)10:38:26 ]



    • 「野球の監督でもなんでも連れて来いよ!!」


      この季節は、野球という言葉にすぐ耳が反応する。
      そしてそれは秋まで続く。
      我が読売Gがここ最近ではまれに見るような
      弾丸スタートダッシュを決めている今日このごろ、
      特にその言葉には敏感だ。

      ふとテレビに目をやると、なんのことはない。
      アイフルの悪質な取り立ての様子を録音したテープが流されているだけだった。

      そういえば最近よくテレビで聞くニュース。
      なんでも催促の仕方に問題があったらしく、業務停止とかになってるらしい。
      「野球の監督」というレトリックをここで使うことに
      若干センスのなさを感じるが、確かに悪質な取立てぶりだった。
      キャスターはこんな感じの言葉でニュースをしめる。

      「こういう催促の仕方は間違いなくダメなんですが、
       借りる側の方もちょっと考えられた方がいいかもしれませんね。」




      ・・・ちょっと??

      ちょっとで済むか?? 済むわけねーだろ。
      だいぶだろ?? だいぶ考えなきゃだめだろーがよ。

      っていうかそこまで借りた側が被害者っぽくなってるのが
      どうもピンとこない。
      まあこの件に関しては被害者に変わりないんやろうけど。




      ものすごく当たり前の話をすれば、
      まず、借りなきゃこの怒号はない。
      そりゃそうだな。

      で、万が一借りたとしても、決められた期限にちゃんと返せば
      これもまたこの怒号はありえない。
      そりゃそうだ。

      「約束を守る」

      幼稚園で習うようなこんな決まりを遂行すれば
      こういう取り立てもなければ、問題もない。
      当たり前の話ではあるが、残念ながらこれは事実。

      テープを聞いてたら取り立て方に実際イラっときた。
      そこまで言わんでも、って正直思った。
      ただ、この声の主を苦しめたいなら簡単だ。
      債務者全員が頑張って、ちゃんと金を返せばいい。
      これから借りる人は、しっかりその約束を守ればいい。
      声の感じからしたらそれ専門の仕事の人の可能性があるから、
      そうすりゃ一気にみんなお払い箱だ。食いっぱぐれる。
      だって仕事がなくなるんだから。
      ほらほら、ざまーみろー。



      約束を破られたら、俺は怒る。
      何回も何回も続くなら、俺はもっと怒る。
      その時、相手に反省の色があまり見られないなら、
      本気で怒った俺はあのテープぐらいの言葉は使うかもしれない。
      それでも俺が取り締まられないのは、
      それが仕事じゃないからだ。
      対象が金じゃないからだ。

      ただ、それだけの違い。



      「金がある、ない」ってのは、とどのつまり「優先順位」だと思う。

      彼女のプレゼントを買う金がなくても、エロビデオを買う金はある。
      映画を見に行く金がなくても、ファンデーションを買う金はある。
      友達と飲みに行く金がなくても、携帯電話に払う金はある。

      俗に言う多重債務者は現時点で5万人を超えるという。
      でもその全員が、住む所もなく飯も食えないような
      ひもじい生活を送ってるとは思えない。
      低い金利をいいことに、自分で勝手に優先順位を下げて
      「払えない」ことにしてるんなら
      それはそれで筋通さなあかんやろ。
      おとがめなしなら、そっちの方が問題だ。




      まあ俺はアイフル応援団でもなんでもない。
      そのやり方が法に触れたんなら、思う存分裁かれてほしい。
      ただ、借りた側が約束を破ったんならその責任は取るべきだとも思う。
      妻や彼女にバレて恥をかくのがそうだとするなら、それも仕方なし。

      それがイヤなら
      日雇いでもなんでも、方法はあるぜ。



      今日のBGM:ホルン協奏曲 第4番 第3楽章 by モーツァルト



    • かしこ

    • 歌に奏でてずっと

    • [ 2006/02/26(Sun)06:34:31 ]


    • 音楽好きだった親父が、
      「これからの時代はCDが付いてないとダメだ」
      とかなんとか言って、勇んで買って来たのが
      パイオニア製のバカでかいCDプレーヤー付きコンポ。
      確か、俺が小学生ぐらいの時だったか。
      2階の客間にどかーんと居座ったそいつは、
      いかにもいい音を出しそうな気配をかもしだしていた。

      でもやがて親父も年をとるにつれなかなか使わなくなる。
      俺が高校生にもなると、いつのまにか自分の部屋に奪う形になっていた。
      お姉が大学で家を出てからはCDラジカセ自体も物置に行き、
      俺が出るようになるとそのコンポも物置でほこりをかぶるようになった。

      家にはCDを聴く機械も機会も、ほとんどなくなっていった。


      サンプリングサンでCDを出した時、実家に送ったりもした。
      まあ親父とおかんはカーステレオで何回か聴いたかもしれないが
      実際、家族全員でそれを聴く機会なんてのはありえないわけで。
      実家に帰るたびに、なんか三味線でも弾くような真似をしながら
      「まだ楽団やっとるんか、楽団。」
      なんて言ってたおじいやおばあの耳に届くことは、まずなかった。





      去年、ちーちゃんの復帰曲を描かせてもらった時に、うれしい事が1つあった。
      テレビ番組のエンディングテーマになった事だ。
      もともと実家の風景をイメージして作った曲、
      それをその場所でも流せるというのが嬉しかったし、
      何より親父とおかんはともかく、
      もう90歳近いおじいとおばあに自分の曲を聴かせるには
      家族全員が唯一揃う「お茶の間」に流すしか方法がなかったから。
      今、自分がやってることを一番わかりやすく伝えられると思った。

      放送日の前には、家に電話をした。
      曜日と時間、間違えないように。家族みんなで見てくれと。

      しばらくして、おかんから電話が鳴る。
      家族全員で見たよ、
      なんかおばあちゃんが一番喜んでたみたい、って。


      なんだろう、ほっとした。
      喜びとか達成感とかよりも、安心したという感じだった。
      でも、この時そう思ったってことは、
      もしかしたら俺は何かを予想してたのかもしれない。

      今にして思えば。








      今月、俺が実家に帰ったのは、
      もう動かなくなったばあちゃんに会うためだった。

      きれいな顔だった。
      女優さんみたいな顔しとるね、っておかんが言ってた。
      その通りだった。
      葬式の時の挨拶で、親父が放送日当日のことを話してた。
      エンドロールで自分の孫の名前を見つけた時に
      拍手をして喜んでたって。

      涙が止まらなくなった。

      ちっちゃい頃、とても泣き虫だった俺は
      大人になってから自分以外の人がいるところで泣くのをやめた。
      だから今までずっとそうしてきた。
      人前で涙を流したのは何年ぶりだろう。
      自分は見てないはずの
      拍手をして喜ぶばあちゃんの顔が、消えない。






      さよならばあちゃん、元気でな。
      でも、その前にちょっとでも聴かせられてよかったよ。


      そっちでも聴こえるだろ。



    • かしこ

    • core

    • [ 2006/02/08(Wed)06:37:18 ]


    • 「本当に大事なもの」
      をいつも探してるような気がする。

      ・・・なーんて書くと、
      なんかめっちゃたいそうな事を言ってるように見えるけど、
      まあそんな大げさなことじゃなくて
      あくまで日常レベルでの話でね。

      英語で言えば「core」とか「essence」とかになるんか。
      そういうのをいつも考える癖が、自分にはある。



      例えば、真剣なミーティングや議論の場。
      ここではほんとにそれがよく出る。
      誰かが意見を言った時、
      何よりその意見を言った人の意思や真意を知りたいので、
      「じゃあそれはこういう事か??」と言い換えてみて尋ねる。
      でも、もちろんそれがそんなピンポイントで当たる訳もないので
      自分が納得いくまで繰り返すことにはなるんやけどね。
      抽象的な言葉や表現を好む人にはとかく迷惑な存在だろうと思うけど(笑)
      結果、その議論の効率が良くなることもあるから、
      ま、いっかとは思ってる。



      卵と松茸との値段の差に納得がいかないのも、たぶんそこから来てるんだろう。
      「希少価値」ってのは「バブル」のようなもんやと思ってるから、
      その泡をプチプチ割っていってさ、本当の姿を知りたいんよね。
      それこそどっかの会社の時価総額のように。

      ま、もちろんそのバブルのおかげで楽しめることも世の中いっぱいあるから
      それはそれで全然いいんやけど、
      知りたいっていう思いは常にあって、
      卵と松茸の生産量をそっくり入れ替えたら
      値段はどう変わるのか、なんてこともよく考えてみたりもする。



      音楽を聴いてる上で、これほどメロディーにこだわってるのも
      きっとそこに自分のcoreがあると思ってるから。

      原点に戻った時にそれが小学校の音楽の教科書で、
      そこにはメロディーしか載ってなくて。
      自分の中でいろんなものを剥いでいったら
      それが残ったって事なんやろうなあと思う。



      じゃあ、あえてそのメロディーの中でのcoreは何かと言うと、
      意外にもそれが「リズム」だったりするのだ。

      もちろんこのリズムってのは
      ドラムやらベースやらの事を言ってるわけではなくて、
      メロディー自体のリズムね、ノリというか。
      言葉にするなら、メロディーの音符が
      4分音符なのか付点4分音符なのか、
      16分休符は入るのか入らないのか、
      スタッカートなのかどうなのか、とか
      例えばそういう細かいとこでも
      自分がメロディーを作るにあたってはとても重要なポイントで、
      そこなくしては自分のメロディーじゃないって言い切れる。

      だから、俺が思ういいメロディーってのは
      「いいリズムを持ったメロディー」ってことにもなるのだね。

      そう。行き着くところは実はリズムなんだ。





      「Love & Rhythm」の歌詞を描いた時、
      一番最初にできたのは最後の1行だった。
      なんとなく唄いながら口をついて出てきた言葉を
      そのまま書いただけだった。

      いろんなものを削ぎ落として残った、大事なもの2つ。
      そこに「愛」があったのが自分でもちょっと笑えるけど、
      心の中のcoreはきっとそれって事なんだろう。





      あなたのcoreは何ですか??

      そんなアルバムが、今日発売です。



      今日のBGM:「Love & Rhythm」 by サンプリングサン




    • かしこ

    • 作者は不明

    • [ 2006/01/26(Thu)18:14:03 ]


    • ・・・時価総額はっせんおくえ〜〜ん


      あかん。言葉ノリが悪すぎる。
      俺ならそっこーダメだしだ。
      はっせんおくえ〜〜ん、に至っては元メロから音符が4つ以上増えてるし。
      もうちょっとなんかあったやろ、あれだけスタッフいんねんから。
      作曲者側から言えば、メロがもう壊れてるレベルだぜ。

      まあでも詞の内容ではなく、ほんまにそこに関しての苦情が作者から来たら
      それはそれでおもしろい。

      「お前もっとメロ大事にせーやー」 ってね。



      そういえばちっちゃいころの唄ってた童謡とか、
      教科書に載ってるような世界の民謡とかって
      作詞、作曲者の欄が「作者不明」ってクレジットになってたものもけっこうあった気がする。
      誰が作ったかわからん、って事よね。

      これ、いーわー。あこがれるわー。



      そうやなー、例えば、
      なんかの爆発で地球がほぼ壊滅したとしてさ。
      当然、俺も死んで、うちのまわりも瓦礫の山になって。

      その後、何百年かたってその生き残りがうちの近くに来るわけ。





      「隊長、なんかMDみたいなものを発見しましたが・・」

      「ん?・・ミニディスクというやつか??」

      「・・・の、ようですね。えーっと、ゆういちデモ、と書いてます。」

      「デモ・・・、当時デモテープと呼ばれてたものかね。」

      「と、思います。・・でも、テープじゃないですよねえ??」

      「いいんだよ、当時はCD発売記念っていうのも、レコ発と省略されてたらしいから。」

      「なるほど。ノスタルジックですね。」

      「よし、本部に再生機が残ってたはずだ、戻って聴いてみよう。」





      「・・・いいじゃないか、これ。」

      「ですね。特に3曲目は心に染み入るものがあります。
       当時の群集が大声で唄ってるのが想像できますね。」

      「なるほど、この復興の世の中にピッタリのメロディだ。
       詞をのせて広くみんなに伝えよう。
       ・・・ちょっと上層部にかけ合ってくる。」

      「ただ隊長、作曲者の名前はどうします??
       ここには「ゆういちデモ」としか・・・」

      「そうだな。きっとこのゆういちという人が書いたんだろうが、確証はないしな。
       それに、ひらがなってのも・・ちょっとな。」

      「たしかに。ではやはり作者不明、で。」

      「それが賢明だろうな。じゃ、ちょっと行って来る。」

      「よろしくお願いします。」





      ・・・ってな感じで、作者不明のまま
      俺の曲は世界中で唄われることになる。
      歌詞についてあーだこーだ言う手段はその頃はもう残ってないけど、
      ま、いっか。

      いーわー。あこがれるわー。



      その後、どっかのおっきな会社が
      それをもとに替え歌を作り、忘年会で社員みんなで歌って、
      後にそこの社長が逮捕されて、
      スキャンダラスにその替え歌が広く放送されたとしても、
      俺は文句を言わないよ。


      言葉ノリさえよければね。


      今日のBGM:「ゆういちデモ3曲目」 by 作者不明



    • かしこ